2010年2月18日 星期四

小渕総理大臣への書簡

小渕総理大臣への書簡


黄爾璇

総理大臣閣下:

中国国家主席江沢民氏が十一月二十五日に貴国を訪問する予定だと聞いておりますが、中国はこの間、「三つのノー」についての共同コミュニケを貴国に要求すべく策動をつづけてきました。あるメディアによれば、両国首脳の会談の折に、閣下が口頭で「台湾独立を支持せず、二つの中国を支持せず、独立した国家だけが国連に加盟できる」との意志表示をする可能性がある、と伝えています(朝日新聞一九九八年十一月四日付)。このような意志表示は、書面によるものであれ口頭によるものであれ、台湾に害を及ぼすものであります。したがって、民進党および大多数の台湾人の重大な関心を寄せるところです。

歴史を振りかえって見ますと、台湾は下関条約の結果日本の植民地になりましたが、第二次世界大戦が終わった後、中華民国政府はマッカーサー元帥の連合軍極東最高司令部が発行した「一般命令第一号」を根拠に兵員を派遣して台湾を占領し、人民の同意を経ることなしに勝手に「省」を設置しました。戦後における台湾の主権の帰属の問題に関して、貴国は一九五一年のサンフランシスコ平和条約において、また一九五二年の日華平和条約においても、いずれも台湾および澎湖諸島の領有権を放棄することを声明していますが、その帰属については何の言及もありませんでした。多くの国の外交文書やサンフランシスコ平和条約への参与者の発言は、たしかに、当時の国際社会が台湾を中華民国、中華人民共和国あるいは中国のいずれにも帰属させていないことを示しています。しかしながら、中華民国政府が国共内戦の後台湾に撤退し、これを今日まで統治してきたことは、すでに歴史的事実となっております。この半世紀の間、台湾人民は国民党政府の高圧統治を受けましたが、民進党ができて民主化を推進したため、台湾の政治は初めて開放されるにいたりました。台湾の国会は、一九九一年から、人民が直接に中央民意代表を選出する制度に改められ、一九九六年には初めて総統の直接選挙が行われ、台湾・澎湖・金門・馬祖の人民が李登輝先生を総統に選びました。国家の構成要素と国際法からみて、台湾は自分の領土・政府・主権および人民によって直接選出された国家元首を擁していますから、国家の名称が中華民国であろうと、または改名して台湾になろうと、台湾が独立自主の国家である事実には変わりなく、ましてや中華人民共和国には台湾の主権について何らかの主張をする権利などまったくありません。

実際には、第二次世界大戦後の人民自決の原則に照らせば、もともと台湾は独立自主の新国家となっているべきでありました。当時においてもし台湾人が自分たちの憲法を制定し、自分たちの国家を創立することができたとしたら、これがもっとも理想的な姿であったはずです。しかし不幸なことに、国民党政府はその政権の正当性を護持せんとするために、中国内戦の継続というメンタリティをあくまで変えず、「一つの中国・台湾は中国の一部分」であり、彼らの主権は「中国大陸と外モンゴルに及ぶ」との主張を唱えつづけました。その後一九九一年になって動員戡乱時期の終止を宣言し、大陸反攻のスローガンも放棄して、「両岸関係は分裂分治国家の関係である」、「一つの中国とは中華民国で、台湾は中華民国の一部分である」などと、主張を改めるに至りました。これに対して、中国側は「一つの中国とは中華人民共和国で、台湾は中華人民共和国の一省である」と主張しています。この二つの主張はいずれも事実に適合しないものでありますが、世界諸国の対台湾外交にトラブルをもたらし、中華人民共和国が内政問題との建前で台湾を威嚇する口実を与えることになっています。

私たちは、いくつかの問題は台湾人民が自分で解決しなければならないことをよく承知しています。しかし、そのためには少し時間が必要です――台湾の人民が過去の専制統治への恐怖と盲従から目覚めて、自立性を取りもどすための時間が。そして、この自立性の目覚めまでのあいだ、列強が台湾に不利な要因を押しつけることがないよう願っています。この数年間、台湾人民は次第にかつて国民党政府が長期にわたって強制的に注入した官製イデオロギーの混迷から目覚め、「中華民国」の国名がもたらすトラブルを認識しつつあります。したがって、今後は民主的な手続を経て国名の変更を促進させていくものと予想されます。最近の世論調査はいずれも台湾独立への支持が日増しに高まっていることを示していますが、中国との合併に反対する票をこれに加えると、その比率は八五%にまでなります。大多数の台湾人が台湾は台湾であり、中華人民共和国は中華人民共和国であり、台湾の未来は二千百八十万の台湾人民が一緒に決めるべきであると考えていることは、この事実が証明するところであります。

本年六月、米国のクリントン大統領が中国を訪問しましたが、非公式ながら上海で民間人と会見したとき、いわゆる「三つのノー」の発言をして、台湾人民の大きな失望を招きました。ただ、クリントン大統領の訪中の後、米国は直ちに特使の派遣、国会決議、兵器売却の継続などの形で、米国の台湾政策に変更がないことを示しました。これに加えて、米国にはまだ台湾関係法があり、台湾の安全を保障しています。

日本と台湾とは、歴史の上でも地縁においても、アメリカとより密接な関係にあります。日本と中華民国は一九七二年から外交関係が断絶しておりますが、文化・学術・経済・貿易などの分野の民間交流は依然として盛んで、台湾と貴国との間の深い友好関係を反映しています。最近江沢民氏が貴国を訪問することに関して、貴国には多数の政治家や評論家がいて、「サンフランシスコ平和条約で台湾に対する領有権を無条件で放棄した日本に、三つのノーについて発言する資格があるのか」などといった、台湾の立場を尊重する考え方があることに、大きな喜びと安慰を覚えています。

私たちは、日中両国首脳の会談において、貴国が日台両国の歴史の淵源と親善の立場に鑑みて、公式または非公式の形を問わず、台湾問題に対して「三つのノー」にまつわる声明または文書を発表したり、署名したりしないことを希望します。どのような国でも、台湾を中国の内政問題とする口実を中国に一旦与えた以上、これは台湾人民に対して厳重な傷害をもたらす行為となります。特に、中国は近年来積極的に海上の兵力を拡張し、東アジアに覇を称える野心を露にしてきました。世界民主主義陣営の西太平洋防衛ライン上の要所をしめる立場にある日本としては、中国がアジア・太平洋地域の平和を脅かすことに対して慎重に警戒すべきであります。私たちの党がもっとも正しく台湾人の立場に立ち、独立自主を追求する台湾人の意志を代表していると、私たちは深く信じています。台湾が正に国会議員(立法委員)および二大都市市長の改選を実施せんとするこの重大な時期にあたって、貴国がその立場を堅持し、独立建国を追求する台湾人の願望を尊重すること、そして台湾併呑すべく中国が策略をめぐらせているこの折に中国の野心を助長し、台湾の生存の路を困難にするような言動をされないことを、切に希望するものであります。

敬  具

立法院民主進歩党党団

総召集人 黄爾璇

一九九八年十一月二十日

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